深沢レナ/プラトンとプランクトン深沢レナ/プラトンとプランクトン

『痛くないかもしれません。』

深沢レナ 第一詩集『痛くないかもしれません。』(七月堂) 〜帯より〜 通称レナ沢さんとは、教え子というより先輩後輩のような関係(もちろん向こうが先輩)なのだが、その一見野蛮とさえ思える放埓な態度の裏側に、華奢で可憐な、おそろしく傷つきやすい少女が隠れていることに、私はうすうす感づいていた。 本書を読んで、自分の勘は正しかったことが、よくわかった。 ——佐々木敦(批評家) 強くて弱い、弱くて強い。 レナがなぐりかかってくるから 読みながらなぐりかえしてやるのだ。 それなのにまた立ち上がってなぐりかかってくる。 弱いのに強い、強くて堅いそのこぶしが そのこぶしが、痛くてたまらない。 ——伊藤比呂美(詩人) れなざわレナ沢深沢レナはその傷つきやすい横腹の皮膚をみずからまとって、複数の自分を強烈な陽射しと鋭い爪を持つ海鳥たちにさらしていた。待った甲斐はあった。私はテーブル越しに、名前は呼ばないで、おずおずと旧仮名遣いの進言を試みた。どうでせう、まだ痛みはあるかもしれませんが、そろそろ観測用の係留気球をいくつか選んで圏外へ飛ばしてみては? 彼女は少しも表情を変えずに、痛くないかもしれません、とまっすぐに答えた。 ——堀江敏幸(栞「係留気球を切り離す」より)

深沢レナ 第一詩集『痛くないかもしれません。』(七月堂) 〜帯より〜 通称レナ沢さんとは、教え子というより先輩後輩のような関係(もちろん向こうが先輩)なのだが、その一見野蛮とさえ思える放埓な態度の裏側に、華奢で可憐な、おそろしく傷つきやすい少女が隠れていることに、私はうすうす感づいていた。 本書を読んで、自分の勘は正しかったことが、よくわかった。 ——佐々木敦(批評家) 強くて弱い、弱くて強い。 レナがなぐりかかってくるから 読みながらなぐりかえしてやるのだ。 それなのにまた立ち上がってなぐりかかってくる。 弱いのに強い、強くて堅いそのこぶしが そのこぶしが、痛くてたまらない。 ——伊藤比呂美(詩人) れなざわレナ沢深沢レナはその傷つきやすい横腹の皮膚をみずからまとって、複数の自分を強烈な陽射しと鋭い爪を持つ海鳥たちにさらしていた。待った甲斐はあった。私はテーブル越しに、名前は呼ばないで、おずおずと旧仮名遣いの進言を試みた。どうでせう、まだ痛みはあるかもしれませんが、そろそろ観測用の係留気球をいくつか選んで圏外へ飛ばしてみては? 彼女は少しも表情を変えずに、痛くないかもしれません、とまっすぐに答えた。 ——堀江敏幸(栞「係留気球を切り離す」より)